X社分工場 | 多治見陶器産地 | |
1986年度出荷額(億円) | 520億円 | 503億円 |
常用雇用 | 605人 | 6151人 |
県内関連事業所数 | 下請 1社 | 728事業所 |
商業関連 | なし | 935事業所 |
同雇用数 | 0人 | 2570人 |
長野県栄村との出会い
バブル崩壊のころ、京都に移り、やはり調査を通して、ある地域との決定的な出会いがありました。長野県栄村です。
もともとは、京都府農業会議での仕事で、当時京都府内において最も高齢化率が高かった大江町(現・福知山市)で実施した調査がきっかけでした。大江町は京都府北部にあり、大江山の鬼伝説という無形の歴史資源を活かした、ユニークな地域づくりを展開していました。宿泊施設や鬼の交流博物館、鬼瓦公園の建設、世界鬼学会の設立をおこない、全国的に注目されていたのですが、ハコモノが建設される一方で働く場が増えていないという悩みにつきあたっていました。
また、第三セクターで観光開発をしようとしていましたが、特産品を作る経済主体がほとんどなく、経営的にも展望が見えない状況でした。しかも、高齢者率が高まっており、町としてどのような地域づくりをしたらいいのかを考えなければならない時期に差しかかっていました。
この大江町の調査を通して、いかに公共投資をおこなってハコモノをたくさん建設しても、地域の働く場が増え住民の生活が向上しなければ、地域が豊かになったとはいえないのではないかという考え方が固まっていきました。しかも、高齢者の生活調査を通して、無年金世帯の存在や、国民年金と厚生年金・共済年金との格差を知ることにもなりましたし、年金総額が町財政の3分の1にも相当し、それが町の小売業、福祉サービス業、タクシー業、建設業に支払われることにより、町の経済や雇用が支えられているという「年金経済」の存在を見出すこともできました。
産業振興だけでなく、高齢者や子供を含む住民全体の生活の向上のために、何が必要なのかということを明らかにしなければならないと思うようになりました。産業と生活、この両者を総合した地域経済学が必要だと考えるようになったわけです。そして、第3セクターを生かした地域づくりの先進地として、大江町の比較のために訪問したのが、栄町でした。
次回・・・長野県栄村との出会い②