内部循環型経済をつくる②
栄村振興公社は、1986年に秘境・秋山郷にある村営宿泊施設を引き継ぐ形で設立されました。村が100%出資し、村長が理事長を兼ねています。観光・宿泊施設の収益事業のほか、公益事業として特産品の開発・販売斡旋、都市との交流、地域活動情報の提供、自然保護や文化事業もおこなっています。
この公社とは別に、93年に、村、農協、森林組合、商工会が共同出資した、有限会社・栄村物産センターがあり、公社と連携しながら道の駅「またたび」を運営しています。
栄村振興公社のユニークな点は、宿泊施設などでのお土産物や食材、そして「地域内再投資力の発見」で紹介した飲料も含め、出来るだけ多くの商品やサービスを村内の事業所や農家、生産組合から調達するようにしていることです。直営施設での雇用も正社員、臨時職員で30人近くになるほか、パート職員も数十人に及びます。01年度の決算を見ると、2億8000万円の調達額の7割が村内から調達していることが分かりました。この村内調達額を、村の全世帯数で割ると、実に22万円に達しました。毎年、これだけの金額を公社と取り引きしている村内の農家や事業所、協同組合への支払や、雇用されている職員の賃金として、村の地域経済に還流させているわけです。
このような「村内調達額」を計算している点にも驚かされます。地方自治体や第三セクターの調達が、どれだけ地域内から調達しているのか、別の言い方をすれば、公共団体がどれだけ地域経済に貢献しているかを数字で把握することは、自治体規模が大きくなればなるほど必要なことではないかと思います。地域内調達額は、伝票の項目に調達元地域のチェック欄を加えれば、即座に計算できるはずです。
この公社では、特産品の開発と販売斡旋も行っています。特産品開発の技術力をつけるために職員を東京の大学に派遣し、宇宙食の生産技術を習得するようなこともしています。もちろん宇宙食を作ることが目的ではなく、そのような高度な加工技術・技能も身につけて特産品開発に挑んでいるいるということです。
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