高齢者も大きな役割を果たす③
最後に、高齢者が受け取っている年金が、栄村の地域経済を支えていることも重要です。年金経済の話は、前号でも述べましたが、高齢化が進む地域においては、高齢者が受け取り、支出する年金の流れが、地域経済の大きな部分を占めるようになっています。99年度に栄村の高齢者が受け取った年金総額は、約10億円であると推定されます。この金額は、村の小売販売額12億円に相当するほか、製造業の付加価値額のほぼ2倍に相当します。また、村の一般会計の約3分の1の大きさにあたります。
「地域内再投資力の発見」で紹介した京都府大江町(現・福知山市)での年金世帯の家計支出調査によれば、年金の支出先の多くが、町内の商店や福祉サービス業、工務店、バス、タクシー業などでした。おそらく栄村でも、高齢者の年金が、村内の生活関連産業(まさにコミュニティービジネスです)に流れ、そこでの経済活動や相対的に若い世代の雇用を持続可能な形で生み出しているのです。
その際、村がおこなっている細かな高齢者福祉をはじめとする独自施策が、年金の地域内経済循環のパイプ役として機能しているわけです。このようなことを考えると、年金普及額を引き上げたり、消費税率を引き下げれば、高齢化が進んだ地域経済への波及効果は、即座に出るのではないかと思います。
政府は、公的年金制度の解体と、民間保険化を見越した給付額の削減、税金や各種保険料での高齢者負担の増大を進めていますが、これは高齢者の生活の維持にとっても、地域経済の持続的発展にとっても、百害あって一利なしといってもいいものだといえます。
・・・完
PR