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02 . May
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25 . September
 栄村の地域づくりに学ぶ① 何をどのように学ぶか

 これまで、たびたび長野県栄村の地域づくりの話を紹介してきました。連載のテーマにある「一人ひとりが輝く」という言葉も、実は、栄村の高橋彦芳村長から教えてもらった言葉です。少数の「勝ち組」企業が活性化すればいいという安易な考え方ではなく、住民誰もが、一人ひとりの個性に合わせて、輝くような地域づくりをしなければならないという思想が埋め込まれた言葉であるといえます。けれども、言葉がすぐれているだけでは意味がありません。実際に、それを現実にしつつあるところに、栄村の地域づくりのすばらしさがあります。

 ところで、講演で栄村の話をすると、ほぼ必ず出てくる質問がありなす。ひとつは、「栄村のとりくみは、高橋彦芳村長という優れたリーダーがいたからうまくいっているのではないか」という質問です。このような質問を、私は「リーダー待望論」と名づけています。確かに、高橋村長は、すばらしい人物で、私は日本の首相にふさわしい人だと、本気で思っています。しかし、高橋さんとて、最初からリーダーであったわけではありませんし、彼の周囲には、同じ志をもって地域づくりにとりくむ仲間たちがたくさんおり、おたがいに議論したり行動したりするうちに、今日のような評価を受けるようになったのではないかと思います。私は、誰もが、リーダーになりうるし、それぞれの個性を生かして地域づくりのネットワークを広げていけばいくほど地域も元気になるので、「あなた自身が動き始めてください」と、「リーダー待望論」(裏返しの「リーダーがいない自分たちの地域はだめだ論」)者に答えるようにしています。
 もう一つの質問は、「栄村は特殊な一山村の事例であり、それ以外の農村や都市ではあてはまらないのではないか」というものです。これを、私は「栄村例外論」と呼んでいます。たしかに、栄村の地域づくりは、山村の豪雪地帯だからこその個性的なものだといえます。しかし、問題は、その地域づくりのとりくみのなかに潜む普遍性をいかにくみとるかというところにあります。企業経営の場合もそうですが、よく「○○すれば成功する」という「ビジネスモデル」が紹介され、それを適用すれば経営は成功するというような考え方があります。しかし、このような「形だけのモノマネ」では、企業経営が成功するはずはありません。問題は、自分の企業の個性をどのようにとらえ、成功したといわれる企業経営から何を学ぶか、しっかりと自分の頭で考える必要があります。

 これと同じように、地域づくりについても、成功したといわれる事例を、そのままモノマネしても、うまくいくはずがありません。もう一歩踏み込んで、典型的な事例のなかから、自分の経営や地域と比較しながら、主体的に何を学びとるかという姿勢こそ大切だといえます。

 さて、前置きが長くなってしまいました。栄町の地域づくりにおいて、何を学ぶべきか、私が考えてきたことをお話していきたいと思います。

次回・・・「ふるさとの家」をきっかけにした個性の発見
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14 . October
 「ふるさとの家」をきっかけにした個性の発見
 
 栄村は、長野県と新潟県の県境に接し、千曲川が信濃川に変わる山村です。日本有数の豪雪地帯に2500人近くの住民が生活しています。高齢化率が40%に達する村でもあります。この村も、1988年に高橋彦芳村政が誕生するまでは、他の市町村と同じように国や県のいうとおりの農政や企業誘致政策を行っていました。しかし、それによって、村は活性化することはなく、誘致企業は撤退し、過疎化と高齢化が進行し、村民は雪のなかで暗い気持ちで冬を過ごしていました。

 そのようななかで高橋村長は、個性を大切にした政策を展開していきます。それは、栄村の個性を知ることであり、住民一人ひとりの個性を大切にすることを意味します。

 その出発点となったのが、連載第2回でも紹介した「ふるさとの家」です。廃屋になった農家を活用して、都会の人々を迎えて、そこで村の人たちと交流する試みです。この「心の交流」を通して、「何もない村」と思っていた自分たちの村が、都会の人々からすると多くのすばらしい「宝物」に恵まれていることを知るようになります。その典型が「ねこつぐら」でした。「つぐら」は、藁で作られた容器であり、かつては子どもや御櫃などを入れていた生活用品でしたが、今ではほとんど使われなくなっています。

 この「ふるさとの家」の片隅に古い「ねこつぐら」を見つけた都会の住人が、飼い猫のために「是非これを売ってほしい」と申し出たことをきっかけにして、特産品「ねこつぐら」が生まれることになります。村人のなかでは、「つぐら」は古くて時代遅れのものでしたが、都会の人からみるとプラスチックの容器にはない自然の風合いが楽しめる素敵な商品に見えたのでした。「つぐら」を作ることが、都会の人々に喜ばれ、しかも1万円前後の値段で売れることから、「つぐら」を製作できる高齢者はとても元気になっていきます。もっとも、製作者の違いによって品質がばらばらになってはいけないので、同じような藁細工である「猫ちぐら」を特産品としていた新潟県の関川村にわざわざ研修に出かけ、売れる製品をつくる努力も怠りませんでした。

 「ねこつぐら」だけでなく、採れたての野菜や山菜の美味しさを味わってもらい、その感想を直接聞くなかで、村人たちは自分たちの生産物や生活、そして栄村のすばらしさに自信と誇りをもっていきました。地域の個性と、それを支えてきた生活や生産活動の個性を発見するということは、実は、住民が自分自身の存在価値を再発見することでもあるのです。そのなかで生きがいを感じ、生き生きと輝く人生を送ることができるようになります。これは、果たして栄村でしかできない「例外」的なことでしょうか。私は、どの地域、どの経営体や組織にも応用できる普遍的なことではないかと思います。

次回・・・自治体の公共事業を住民のものに
14 . October
 自治体の公共事業を住民のものに 1

 第2の学ぶべき点は、村の公共事業が、住民のために工夫しながら行われていることです。その代表例が、有名な「田直し事業」です。田んぼの圃場整備をおこなう事業ですが、平場の農村では通常農林水産省の補助金を使っておこなわれていますが、栄村では村の単独事業でおこなっており国の補助金は使っていません。それには、いくつもの理由があります。ひとつは、栄村の農地の特殊性によります。栄村は、村全体が山村であり棚田や谷田が多く、まとまった平坦な圃場はほとんどありません。農林水産省の補助金事業で建設工事をおこなうと、反(10アール)当たり200万円を超えてしまうほか、傾斜地の法面が多くなるために実際の圃場が狭くなるという問題がありました。補助金事業は、100%国や県がお金を出すわけではなく、土地保有者である農家も自己負担しなければなりません。しかも、補助事業の多くは地域外の大手建設業者が受注することになります。

 ところが、栄村の農家の高齢化率は60%を超えており、多額の借金をすることは不可能なことでした。他方で、高齢化がすすむなかで、農作業をするために機械を入れたいという要求も強く存在していました。それを解決するための妙案が、村の単独事業でおこなう「田直し事業」でした。高橋村長の友人でもあった広瀬進村会議員が、隣接している新潟県・津南町で古くからおこなわれていた農民主導の圃場整備事業にヒントを得て、提案したものです。夏場に、農家と村の担当職員、そして建設業者の三者が圃場に立って、どのような工事にするのかを決めます。その際、設計料はとりません。通常の補助金事業では、事業費の1割近くが設計料となっていますが、それが節約できるわけです。

 また、圃場整備工事そのものは、冬場除雪に使っている村の重機を活用し、建設業者はオペレーター契約で雇われています。これで、反当たり最高40万円に抑えることができました。また、そのうち20万円を村が補助し、残りの20万円を1年据え置き、5年償還で返す返済システムをつくりました。栄村はコシヒカリが大変美味しいところで、しかも反当たり平均8俵とれるところです。米価が高かったころは、このうち毎年2俵を返済にあてればいい計算になり、借金の負担も大きく軽減され、多くの農家が田直し事業に参加しました。

 この田直し事業は、補助金による大規模圃場整備事業と比較して、いくつもの効果を生み出しています。ひとつは、農家の家計と村財政の負担を大きく軽減したことです。また、村内の建設業者に工事が発注されることにより、村の支出が地域内に循環し、建設業者の投資力と担税力を高めることになりました。さらに、圃場整備をおこなった結果、稲作の共同作業を始める集落が生まれたり、村が生産資材を支援したこともありチンゲン菜やホウレン草などの軽量野菜、菌茸類の出荷額が増えて、農家1戸あたりの農業生産額が県平均を上回るようになったりしました。つまり、農家の投資力を高める効果も生み出したのです。

次回・・・自治体の公共事業を住民のものに 2
15 . October
自治体の公共事業を住民のものに 2

 同様の工夫は、下水道整備事業や生活道路の整備事業についてもおこなわれています。広い土地に集落が点在する栄村では、中心集落地域を除いて、農林水産省の補助金による下水道整備事業は、財政面からみても、家計負担の面からみても困難でした。しかし、村民の多くは、下水道の普及を心待ちにしていました。そこで考えたのが、建設・管理コストが安くつく合併浄化槽方式です。

 ここまでは、今では日本のあちこちで見られることです。栄村では、もうひと工夫します。この合併浄化槽の建設と管理ができる村内業者に集まってもらい、共同の有限会社「環境さかえ」をつくります。この会社に、合併浄化槽の建設と管理を受注させるシステムです。これによって、放っておけば、地域外の大手下水道業者が請け負ったと考えられる下水道事業の支出を、村内の関係業者に循環するシステムをつくったわけです。もちろん、これは一部企業と裏で取引するという談合的なものではなく、透明な契約形態による、財政支出の地域内経済循環の組織化であるといえます。

 地方自治体の公共事業は、昨年来のいくつかの県知事の逮捕等に示されるような特定会社との癒着や談合という問題だけでなく、地域経済への波及効果がすくなく、大手ゼネコンに仕事が集中し、地方自治体の貴重な財源が域外に流出するという大きな問題があります。また、ダンピングによって、地元の建設業者や従業員がとても経営や家計を維持できない水準にまで、入札価格が落ちています。

 現在、各地で公契約条例を制定したり、中小企業振興基本条例を制定したりして、経費や賃金を適正な水準に維持するとともに、地域貢献や環境貢献を重視した入札制度の導入を求める運動が展開しつつあります。都市部でも、地方自治体の公共投資のあり方を点検するとともに、栄村の公共事業のような考え方で、何よりも地元地域の住民や経営体を重視した方向に展開することは、工夫次第で可能であるといえます。

次回・・・栄村の地域づくりに学ぶ② 内部循環型をつくる
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