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02 . May
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16 . May

まず、地域の個性を知る

 よく、地域づくりの秘訣は何ですかと質問されることがあります。どうやら、先進的な地域づくりの話を聞いて、自分の地域でも効果のある『特効薬』を知りたいという人が多いようです。

 けれども、残念ながらそのような『特効薬』はありません。人間の体と同じように、地域にも個性があります。その個性を無視して『特効薬』と処方したとしても、副作用によってかえって症状が悪化することになりかねません。これは、戦後日本の地域開発政策の失敗を見れば明らかです。『大型プロジェクトや企業を誘致することで地域は活性化します』というカンフル剤は、地域の持続的発展につながらなかったばかりか、今や多くの地域で地域づくりの大きな障害となっているのです。

 地位づくりをはじめるには、病気を治すのと同様、地域経済や地域社会がなぜ衰退し、疲弊しているのか、何よりもその原因を探ることが先決です。しかも、私たちの地域での暮らしは、日本経済や世界経済の動き、国や地方自治体の動きと密接に絡んでいます。そのような外部環境との関係で、自分たちの地域はどのような位置にあり、いかなる個性をもっており、そのためどのような問題に直面しているかを探ることが必要になります。

 地域の個性というのは、まず自然条件によって規定されています。地形、高度、気候、水流や水質、土壌条件などは、その地域の植生や自然から得られる農林水産物の質や量を決める物質的要素となります。また、その自然とのかかわり合いのなかで、私たちの祖先が歴史的に地域での産業、生活、文化を築いてきました。その有形無形の歴史的遺産もまた個性を形づくる重要な要素です。さらに、これらを土台にして現代の私たち住民の生活があります。そこでの経済、政治、文化活動のあり方は、地域の個性を形づくる能動的な要素です。しかも、市町村という基礎自治体は、財政を活用して、住民の生活にかかわるあらゆる分野において行政サービスや公共投資、支出をおこなっている、極めて重要な地域づくりの主体であり、その自治体の施策の内容もまた、地域の個性を規定する大きな主体的要素であると言えます。

 そしてこの自治体の主権者は私たち住民であるわけですから、地域の経済、文化活動の担い手としての役割も併せて考えると、結局は、一人ひとりの住民が、地域の個性を自覚的に創りだすことのできる決定的な主体であるといえます。その『自覚』は住民が地域の個性を知り、学ぶことから始まるわけです。

 地域づくりの先進地を訪ねると、共通して発見できることがあります。それは、地域づくりの出発点に、住民による『学び』があり、地域の個性を知るとりくみがあることです。

次回・・・『個』を大事にする~長野県栄村~

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29 . May

『個』を大事にする ~長野県栄村~

 長野県栄村は、豪雪地帯と地域づくりで有名な山村です。この村で、1988年から村長を務めている髙橋彦芳さんは『個を大事にする』ことを理念にして、村づくりをすすめてきました。栄村も、高橋さんが村長になるまで、国や県の言うとおりの農政や企業誘致政策を展開してきましたが、かえって農林業が衰退して過疎化が進行、村民は元気を失っていきました。

髙橋さんは、国や県の猫の目のように変わる政策に追従するのではなく、足元の地域の個性を掴むことで、栄村にあった地域づくりのあり方を、住民とともに探っていきます。高橋さんは、村の職員でしたが、長年公民館職員として社会教育の分野で活躍していました。

そこで、青年や女性、農民の人たちと一緒に、栄村の自然や歴史、農林業の特徴などを学んだ経験がありました。村長になってからは、村外の専門家を呼ぶだけでなく、農家の廃屋を利用した『ふるさとの家』で村民とともに都市の人々と懇親を深め、栄村の長所や短所を学んでいきます。その成果は、地域の個性に対応し、しかも住民づくりに主体的にとりくんでいくユニークな村の単独事業に結びついていきました。

続く・・・『ココ学』を究める ~大分県・由布院~

10 . June
『ココ学』を究める~大分県・由布院~

 NHKの朝のテレビ小説「風のハルカ」の舞台となった大分県・由布院(現・由布市)も、地域づくりの先進地で有名です。今では年間400万人近い観光客が訪問する日本有数の人気温泉地です。しかし、30年~40年前までは、ただの田舎の温泉地にすぎませんでした。しかも、1975年に地震災害に襲われ、温泉地としての危機を迎えます。このころから、中谷健太郎さんや溝口薫平さんら旅館の若いリーダーたちが中心となって、町づくり運動を展開していきます。彼らは「湯布院の自然を守る会」(後の「明日の由布院を考える会」)をつくります。地縁や職種、階層を超えた幅広い分野の住民が自主的に集まり、湯布院の自然や観光資源、農業について学び、将来の町づくりの方向性を定めていったのです。当時年4回発行された機関誌『花水樹』には、その学びと議論の過程が記録されており、復刻版は現代の若い世代に読みつがれています。

 中谷さんたちが、多くの借金をしておこなった西ドイツの先進地調査も踏まえて得た結論は、「もっとも住みよい町こそ優れた観光地である」ということであり、豊な自然と温泉、そこに住む人々の充実し落ち着いた生活が、湯布院の最大の観光資源であると考え、「クアオルト(健康温泉地)構想」を由布院町(当時)と協力しながらすすめていきました。一方で、外部資本の進出を『潤いのある町づくり条例』のどで規制しながら、他方で由布院の自然や景観を守るために、農林業の恵みを高級旅館も含めて食材として活用し、映画祭、音楽祭などの手作りイベントを30年以上にわたって実施し、町の保健センター職員の努力によって温泉を使った健康事業を生み出すなどの努力を積み重ねてきました。

 その成果をさらに発展させるべきときに市町村合併の嵐が吹き荒れます。中谷さんたちが自立をめざす運動をしたにもかかわらず、結果的に自治体としての由布院町はなくなり、由布市になってしまいました。けれども、中谷さんたちは、落ち込んでばかりいませんでした。合併によって、かえって行政領域と生活領域の違いがはっきりみえるようになったとして、自分たちの生活領域である由布院盆地で、地域づくりを自分たちの力でさらに展開しようと新たな挑戦をはじめています。その手始めが『風のハルカ』であり、農・観・旅の三者の連携の強化を目標としています。由布院盆地の自然の恵みが生み出した有機農業の生産物を旅館が率先して買い入れ、素材を活かした料理法で調理し、旬そのものを豊に食して肉体的にも精神的にも健康を維持、回復できる場をつくるというものです。そのために、農協やNPO法人との連携も強めています。

 「地産地消」がいたるところで重視されるようになりましたが、これは単に大量生産・大量販売方式による市場出荷型の農業・農協経営が行き詰まり、新たに市場として地域内市場が注目されるようになったとこから説明されるものではありません。『医食同源』という言葉にもあるように、その地域に適合した安全安心な農林水産物が、自然の一部としての人間の生命力とその健康を育む源泉となっていることが、明らかになってきたからではないでしょうか。しかも、旬の食材は、とれたての場所で食べるのが最も美味しいわけです。由布院の人々は、温泉という地域固有の自然資源とともに、この点にいち早く気づき、地域づくりをすすめてきたからこそ、その先端を走ったといえます。そして、その学びの意欲は、今も衰えていませんん。中谷さんは、最近『ココ学』を究めたいと考えています。『ココ』すなわち自分が住んでいる場である足元の地域のことを、いっそう深く、広く把握したいということです。私は『地域学』と呼んでいますが、個々の地域の個性を究めることが何よも重要であり、それは尽きることのない奥深いテーマであることを、地域づくりのリーダーから改めて教わった次第です。

次回・・・『豊かさ』を問い直す
30 . June
『豊かさ』を問い直す

 高橋彦芳村長や中谷健太郎さんの話や地域づくりのとりくみの歴史を聞いていると、その目標が、世上で言われる金銭的な『豊かさ』ではなく、自然とともに共生する人間的な『豊かさ』を、住民一人ひとりが実感できるところにおかれている点でも共通していることが分かります。

 立派な道路やハイテクの工場、きらびやかな高層ホテルができたとしても、その地域に住む人々の暮らしが成り立たなくなったり、向上しなかったとしたら、それははたして『豊になった』と表現できるのか。このような、高度経済成長期以来の日本の政財界がつくりだした大企業本位の「成長神話」に基づく価値観に対して、地域にしっかりと腰をすえ、そこに住む住民の視点から、自然とのかかわり合い、人間と人間とのかかわり合いにおける物質的、精神的豊かさの総体を追求すべきであるという人間本位の価値観が対置されているといえます。

 しかも、そのことを表現する言葉づかいも実に人間味たっぷりで、温かみがあります。高橋彦芳村長は、「一人ひとりが輝く村づくり」を掲げています。最初の村長選挙の際に掲げた公約は、「住民がもっている知恵や技術を生かし、育てることを大切にする住民自治の村政」「住民がふるさとの自然や文化に誇りをもち、明るく活動することを大切にする村政」「高齢化、結婚難、就労、健康問題などの生活不安にとりくみあたたかみのある村政」でした。一部の多国籍企業の利益の最大化を追求し、それを支援する国家にすべきであるという現在の財政界の言う『グローバル国家』の考え方とは、真っ向から対立する、一人ひとりの住民の人間らしい生活の実現をうたっている点は目が覚める思いがします。

 若いころの中谷さんが、『花水樹』の創刊にあたって記した言葉も印象的です。「由布院の町がどんな産業を持ち、どんな文化を形成しうるかということは、すなわち私たち由布院に住む者が、あなたが、私が、どんな産業を望み、どんな家に住みたいと思い、どんな食べ物がおいしいと感じ、どんな生き方を好ましいと考えるか、要するに私たちがどうように生きるかにかかっていると思うのです。」そして、由布院の美しさの正体を見極め、それが分かったときには、命がけで『美の根源』を守り育てていくべきであり、「それだけが私たちが子孫に残してやれる大きな遺産になる筈です」と述べています。

 地域づくりは、まさに個々の住民の人間としての生き方が問われるものであり、自覚した個が連帯、協同することに加え、個としての住民が組織化する自治体の力も活用することによって、地域全体としての美しさも創造、継承されるというこどではないでしょうか。

 もっとも地域づくりが人間の生き方の問題であるとしても、肩の凝るような難しいことではありません。高橋村長や中谷さんをはじめ、地域づくりにとりくんでいる人々は、常に周りの人々と語り合い、知識や情報を吸収し、突拍子もないホラ話や夢物語をし、おいしい料理屋酒を愉しみ、実に生き生きとした魅力たっぷりな人物たちです。

次回・・・地域の『宝物』を探し、つなぎあうとりくみ
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