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02 . May
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29 . September
下請けのなりわい経営

 下請けは日本にしかない不合理な存在です。仕事に対する裁量はほとんどなく、責任だけを負わされることによって従属の立場におかれています。人はなぜこの従属に我慢するのか。それは言うまでもなく家族を守るためです。経済評論家の内橋克人さんの言う日本型自営業の「家のため」の原型がここにあります。
 
 ほとんどが家業から出発したなりわい経営は経済的には不合理です。家族が生計を立てられればそれでいいというので、もうけ優先の「合理性」はそこにはありません。しかし日本の下請け業者はこの不合理とたたかいながら、しぶとく生きています。今回はその下請け業者にスポットを当て、そのなかのなりわい経営を見てみます。

 次回・・・下請けの非価格競争力その1 K製作所のMさん
      ①技術で生きる
      商工交流会で自信から確信に
 
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29 . September
K製作所のMさん
①技術で生きる 商工交流会で自信から確信へ


現在の親企業は下請けに長時間・低賃金労働を求めてはいけません。これは派遣労働法が解禁され、代わりはいくらでもいるからです。親企業は下請けに高い技術とそれに付随するリスクの受け皿を求めています。このことは下請けにピリピリした緊張感を強い、下請け経営は精神的に24時間非人間的な過労なものとされています。下請けは技術力と納期と品質、そのうえあらゆるミスをなくす緊張感、これに耐えるものだけが生き残れる世界なのです。

 知り合いに親の代からものづくりをしているK製作所(有)のMさんがいます。親の代には精密機械の代表であったミシンの制作をしていましたが、その高い技術と思っていたミシン工業まで繊維工業と一緒に海外に行ってしまい、彼が経営を継ぐころには転業せざるを得なくなっていました。彼は「ミシンまで海外に行くぐらいだから、転業するならよほど難しいものでないと」と思い、当時あまりなかったステンレスの精密加工にとりくむことにしました。最初はジグ(治具)や高価な材料を壊してしまい赤字の連続でしたが、ようやく技術的には軌道に乗り出し自信を得ていく。この自信を確信に変えたのが商工交流会への参加でした。

 1993年に神戸で行われた商工交流会で「トンネルを抜けると線路ではなく高速道路に変わっている」と言う議論を聞き、その変化を肌身で感じ必死に転業を図っていた彼には、その方向への思い切った転換を図ってよかったと確信します。当時そのための設備投資は数千万円に及び、まさに背水の陣でしたが、これ以外生きる道はないと確信を与えられます。

次回・・・K製作所のMさん ②いつの間にか「○○○に入ってる」

29 . September
 K製作所のMさん
 ②いつの間にか「○○○に入ってる」

 こうしてステンレスの加工で継ぎ手をつくるようになり大口の注文も入り出しましたが、それがどんな仕事なのかは一切分からない。ようやく分かりだしたのはそれから8年近くもたってからです。ある日Mさんから「三方さん○○○って知ってますか」と電話があり、「そら知ってますよ。○○○に入ってる○○○でしょう」と答えると、「そこがうちの親会社だったんですわ」という答え。彼かつくっていたのは世界の半導体の基幹部分、すべてのパソコンに標準装備されているCPU(中央演算装置)の生産ラインに使われる洗浄装置のノズルだったのです。この製品は世界で日本だけで、しかも日本で3社しかつくっていないそうで、それだけ高い技術が必要だったのです。少しの埃も嫌い空気と水のきれいなところに立地する半導体工場、その中でも生産ラインの洗浄装置だけに、出来については細いノズルからの水の出と、ステンの削りかすの混入を特に厳しくチェックされます。ステンの加工の研究のなかで細いノズルの生産と残りかすの出ない工夫、出ても取り除きやすい工夫を重ね、世界の○○○の信用をかちとるまでになっていたのです。

次回・・・K製作所のMさん
③納期・品質・将来性で勝負
20 . October
③納期・品質・将来性で勝負

 ○○○の仕事を従業員6人の小さななりわい経営が請けているのも珍しいが、もちろん苦労も多い。それは納期と品質と取引先が求める経営力の確保です。工場には10台のNC工作機が並んでいます。これらの機械はほとんど自動で働き続けます。2台に1人がついて出来上がった品物を取り出し次の材料を供給する。この仕事は昨日入った人でもすぐに覚えられるので、この工場ではここに20代30代の若い正社員を投入しています。このことが親企業が「やる気」を見るポイントとなっているのです。難しいのは機械にデータを入力する作業と材料を固定し旋盤の回転に耐えさせるための軸の製作です。
 
 特にこの軸の製作は一つひとつ寸法も違い汎用旋盤に頼らざる得ません。ところが今は汎用旋盤を自由に使う人がいない。これをMさんひとりでこなしています。納期はどんなことがあっても守る根性が必要です。そのために昔は社長が朝5時から工場に出ていたこともありました。品質のチェックもますますやかましく、そのために専門の女性を入れるようになりました。単価に文句はないが、設備投資関連特有の好不況の仕事の波の大きさと、いつもクレームが出たらどうしようと精神的に追い掛け回されるゆとりのなさ、それを通じてこの仕事を完成させたときの充実感、ものづくりの楽しさを味わう余裕がないことへの不満がいつも付きまといます。

 今の時代は納期と品質がすべてだと分かっていますが、それでもチェックされるだけでなく、たまには創造的な面で役割を発揮したいと言います。そんな悩みを口にされるのは、管理社会と管理教育に反発して中学しか卒業せず、職人として自由に生きてきた野性のたくましさがこの人の持ち味だからと理解できるのです。

次回・・・下請けの非価格競争力2 ベアリングのT鉄工所
20 . October
ベアリングのT鉄工所

 同じく長年の知り合いにT鉄工所のTさんがいます。Tさんは地場産業で多くいたベアリング製造業者です。ベアリングは機械の動く部分、接続部分に必ず必要な部品です。この部品はロボットのように機械の高度な動きが増えるたびに数も増えますが、一方でますますベアリングも高度で複雑になり、しかも動きがある部分だけに精密さが要求されます。このなかで数多くあったベアリング工場も淘汰され、過当競争もあって小さなところは次々に廃業に追い込まれました。T鉄工所は小さな工場を夫婦2人で営んでいます。それでも仕事が絶えないのは段取りのよさと時代の動きを先取りした設備投資で取引先の信用を勝ち取っているからです。
 
 納屋にはNC設備とロボットが所狭しと備えられ、1日中無人で仕事をしています。人出は段取りと検査だけです。この合理化が夫婦で月商300万円近くを稼ぐ原動力です。最近おこなった難しい仕事ではT自動車のハンドルの自動調整装置とか、M電器の室内給湯器とも湯機の部分とかを扱いました。こうゆう一流メーカーの仕事がとにかくやってくれと入ってきます。しかしTさんのところでこなせるのは月産2万個が限度です。ハンドルの場合高級車から大衆車にこの装置が広まると数が増えて、とてもできないので仕事が全部なくなります。給湯器も増えてくると切削からプレスに変わって仕事がなくなります。そういう意味では大量生産までのつなぎの役割をTさんのところではしていることになります。

 こうした小回りの効く仕事に優位性を見出し生きていっています。現在どこでもと思いますが検品の要求が非常に強まっています。ベアリングの軸受けでも精度が0.03ミリを要求されます。軸受けが軽く薄くなると温度でも自然にゆがみが生じます。このゆがみを発見するのも下請けの役割に加えられてきます。この見た目では分からない精度を感知する検査機を買えばあるのですが、いつまで続くか分からない仕事に何百万もかけるのはもったいない。そこで小さな卓上の検査機を自社で開発しています。

 経営はいくら忙しくても人を入れずコスト高にしないことに優位性を見出しています。この優位性があるから有力な仕事でも量が増えれば「よそに持って行ってくれ」と余裕でいられるのです。自社の長所は技術も設備も小回り力と割り切って、ぎりぎりまで合理化をすすめながら量産に走らない戦略をとっています。これが夫婦2人のなりわい経営の極意なのです。

次回・・・下請けの非価格競争力3 S金型製作所
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