なりわいの原点は「三方よし」
売り手良し・買い手よし・世の仲良し、の三方良しがなりわいの原点とされています。これは近世のあきないをリードした近江商人が家訓としたことで有名です。世の中良しとはどういうことなのでしょうか。近江は京から諸国への交通の要衝で、近江商人の原点は都のものを諸国に行商することで、このなかで商売を学んだと言われます。
行商には信用が第一で、旅先で信用を得るにはその地域の暮らしを知り、それを良くするものを売り買いすることしかない、つまり世の中に役立つことしかないと理解しました。これが「売って利益があります、買い手も喜ぶ」という普通のことを越えた発想を生んだのです。「近江商人商売10訓」というのが伝えられていますが、その5番目に「無理に売るな、客の好むものも売るな、客のためになるものを売れ」というのがあります。これも現代のニーズ論への痛烈な批判になっています。
いまの時代に世の中良しにあたるものはなんでしょうか。最もわかりやすいのが環境問題でしょう。その環境と結びついた資源の浪費に対する関心も強いです。しかし環境問題はいち早く大企業によってニーズに組み込まれてしまっています。中小業者にとってはどういう世の中良しが最求められているのかを連載で取材し討議してきます。
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