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08 . September
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29 . September
下請けのなりわい経営

 下請けは日本にしかない不合理な存在です。仕事に対する裁量はほとんどなく、責任だけを負わされることによって従属の立場におかれています。人はなぜこの従属に我慢するのか。それは言うまでもなく家族を守るためです。経済評論家の内橋克人さんの言う日本型自営業の「家のため」の原型がここにあります。
 
 ほとんどが家業から出発したなりわい経営は経済的には不合理です。家族が生計を立てられればそれでいいというので、もうけ優先の「合理性」はそこにはありません。しかし日本の下請け業者はこの不合理とたたかいながら、しぶとく生きています。今回はその下請け業者にスポットを当て、そのなかのなりわい経営を見てみます。

 次回・・・下請けの非価格競争力その1 K製作所のMさん
      ①技術で生きる
      商工交流会で自信から確信に
 
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29 . September
SEC1. 現代なりわい経営学講座

      自営業研究者 三方良さんによる、なりわい経営講座集


          なりわい経営入門(第1回講座)
          なりわいの社会学(第2回講座)
          なりわいの経済学(第3回講座)
          なりわいの中小企業論(第4回講座) 
          ヒトとモノの非価格競争力【実践編1】(第5回講座) 
          ヒトとモノの非価格競争力【実践編2】(第6回講座)
           ヒトとモノの非価格競争力【実践編3】(第7回講座)
          下請けのなりわい経営
                    
SEC2.『一人ひとりが輝く』地域再生をめざして
     
 
    
  京都大学大学院教授 岡田知弘さんによる 地域づくり実践講座集

         
人間の命を大切にした地域づくりと中小企業・業者の役割 
         
地域づくりは、地域を知り、学ぶことからはじまる 
                地域の『宝物』を探し、つなぎあうとりくみ 
                地域内再投資力の発見
         栄村の地域づくりに学ぶ
          栄村の地域づくりに学ぶ㈡
                      栄村の地域づくりに学ぶ(三)
29 . September
K製作所のMさん
①技術で生きる 商工交流会で自信から確信へ


現在の親企業は下請けに長時間・低賃金労働を求めてはいけません。これは派遣労働法が解禁され、代わりはいくらでもいるからです。親企業は下請けに高い技術とそれに付随するリスクの受け皿を求めています。このことは下請けにピリピリした緊張感を強い、下請け経営は精神的に24時間非人間的な過労なものとされています。下請けは技術力と納期と品質、そのうえあらゆるミスをなくす緊張感、これに耐えるものだけが生き残れる世界なのです。

 知り合いに親の代からものづくりをしているK製作所(有)のMさんがいます。親の代には精密機械の代表であったミシンの制作をしていましたが、その高い技術と思っていたミシン工業まで繊維工業と一緒に海外に行ってしまい、彼が経営を継ぐころには転業せざるを得なくなっていました。彼は「ミシンまで海外に行くぐらいだから、転業するならよほど難しいものでないと」と思い、当時あまりなかったステンレスの精密加工にとりくむことにしました。最初はジグ(治具)や高価な材料を壊してしまい赤字の連続でしたが、ようやく技術的には軌道に乗り出し自信を得ていく。この自信を確信に変えたのが商工交流会への参加でした。

 1993年に神戸で行われた商工交流会で「トンネルを抜けると線路ではなく高速道路に変わっている」と言う議論を聞き、その変化を肌身で感じ必死に転業を図っていた彼には、その方向への思い切った転換を図ってよかったと確信します。当時そのための設備投資は数千万円に及び、まさに背水の陣でしたが、これ以外生きる道はないと確信を与えられます。

次回・・・K製作所のMさん ②いつの間にか「○○○に入ってる」

29 . September
 K製作所のMさん
 ②いつの間にか「○○○に入ってる」

 こうしてステンレスの加工で継ぎ手をつくるようになり大口の注文も入り出しましたが、それがどんな仕事なのかは一切分からない。ようやく分かりだしたのはそれから8年近くもたってからです。ある日Mさんから「三方さん○○○って知ってますか」と電話があり、「そら知ってますよ。○○○に入ってる○○○でしょう」と答えると、「そこがうちの親会社だったんですわ」という答え。彼かつくっていたのは世界の半導体の基幹部分、すべてのパソコンに標準装備されているCPU(中央演算装置)の生産ラインに使われる洗浄装置のノズルだったのです。この製品は世界で日本だけで、しかも日本で3社しかつくっていないそうで、それだけ高い技術が必要だったのです。少しの埃も嫌い空気と水のきれいなところに立地する半導体工場、その中でも生産ラインの洗浄装置だけに、出来については細いノズルからの水の出と、ステンの削りかすの混入を特に厳しくチェックされます。ステンの加工の研究のなかで細いノズルの生産と残りかすの出ない工夫、出ても取り除きやすい工夫を重ね、世界の○○○の信用をかちとるまでになっていたのです。

次回・・・K製作所のMさん
③納期・品質・将来性で勝負
14 . October
 「ふるさとの家」をきっかけにした個性の発見
 
 栄村は、長野県と新潟県の県境に接し、千曲川が信濃川に変わる山村です。日本有数の豪雪地帯に2500人近くの住民が生活しています。高齢化率が40%に達する村でもあります。この村も、1988年に高橋彦芳村政が誕生するまでは、他の市町村と同じように国や県のいうとおりの農政や企業誘致政策を行っていました。しかし、それによって、村は活性化することはなく、誘致企業は撤退し、過疎化と高齢化が進行し、村民は雪のなかで暗い気持ちで冬を過ごしていました。

 そのようななかで高橋村長は、個性を大切にした政策を展開していきます。それは、栄村の個性を知ることであり、住民一人ひとりの個性を大切にすることを意味します。

 その出発点となったのが、連載第2回でも紹介した「ふるさとの家」です。廃屋になった農家を活用して、都会の人々を迎えて、そこで村の人たちと交流する試みです。この「心の交流」を通して、「何もない村」と思っていた自分たちの村が、都会の人々からすると多くのすばらしい「宝物」に恵まれていることを知るようになります。その典型が「ねこつぐら」でした。「つぐら」は、藁で作られた容器であり、かつては子どもや御櫃などを入れていた生活用品でしたが、今ではほとんど使われなくなっています。

 この「ふるさとの家」の片隅に古い「ねこつぐら」を見つけた都会の住人が、飼い猫のために「是非これを売ってほしい」と申し出たことをきっかけにして、特産品「ねこつぐら」が生まれることになります。村人のなかでは、「つぐら」は古くて時代遅れのものでしたが、都会の人からみるとプラスチックの容器にはない自然の風合いが楽しめる素敵な商品に見えたのでした。「つぐら」を作ることが、都会の人々に喜ばれ、しかも1万円前後の値段で売れることから、「つぐら」を製作できる高齢者はとても元気になっていきます。もっとも、製作者の違いによって品質がばらばらになってはいけないので、同じような藁細工である「猫ちぐら」を特産品としていた新潟県の関川村にわざわざ研修に出かけ、売れる製品をつくる努力も怠りませんでした。

 「ねこつぐら」だけでなく、採れたての野菜や山菜の美味しさを味わってもらい、その感想を直接聞くなかで、村人たちは自分たちの生産物や生活、そして栄村のすばらしさに自信と誇りをもっていきました。地域の個性と、それを支えてきた生活や生産活動の個性を発見するということは、実は、住民が自分自身の存在価値を再発見することでもあるのです。そのなかで生きがいを感じ、生き生きと輝く人生を送ることができるようになります。これは、果たして栄村でしかできない「例外」的なことでしょうか。私は、どの地域、どの経営体や組織にも応用できる普遍的なことではないかと思います。

次回・・・自治体の公共事業を住民のものに
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