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月刊民商のオススメ講座を紹介
05 . September
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05 . August
モノの非価格競争力その6 他にないモノを売る米屋

 これまでなりわい経営は価格競争に巻き込まれないことが大事で、そのためにはモノの面では他で売っていないものを売ること、ヒトの面では他にないような売り方をすることの大切さを強調してきました。しかしこれは非常に難しいことで、それが出来たら苦労はいらないという声が聞こえてきそうです。しかしそれは必ずしも不可能ではないのです。
 
 私が5月にお伺いしたお米屋さん(S米穀店)がまさにそのことを実践していました。S米穀店はY県の県庁所在地Y市のはずれの新興住宅地にありました。ここの先代はY県の民商会長を長年されていて、会えばよくお米の話をされていました。これだけお米を愛している店を一度見てみたいと思っていたのですが、残念ながら今年になって急に亡くなられてその機会もなくなったと思っていたのですが、この連載を続けるうちにどうしても気になって電話をしてみたのです。 

 電話には跡を継いでいる息子さんが出られ、取材を遠慮されたのですが、「いまどき跡継ぎがいるだけでも珍しいから」と説得して会ってもらうことになりました。そしてそこで他にないものを売る「究極のなりわい経営」に出合ったのです。

次回は・・・ 商品は店の銘柄で売る
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19 . August
 モノの非価格競争力その6 他にないモノを売る米屋

①商品は店の銘柄で売る

 S米穀店は一見すると高級和菓子店と見間違うようなおしゃれな店でした。店に入ると和菓子の代わりに袋詰めのお米が陳列されています。その陳列を見て「これは違うな」と直感しました。

 陳列されているすべての袋にはコシヒカリ、ササニシキのような産地銘柄名ではなく、この店のお名前「米屋S」の字が大きく書かれていたのです。要するにここで売っているものは米一般でもなく、産地の生産物としての米でもなく、この店でしか売っていない他にないものとして売られているのです。いわゆる店頭ブレンド米の特徴を前面に出し非価格競争の世界をつくっていたのです。

 「話には聞きますが実際に見たのは初めてです」と筆者、さっそく「ブレンド米の評判はどうですか」と聞くと、「食べてもらってそのよさを分かってもらう以外ありません」と言いながらも、「必ず分かってもらえる」との自信が口調ににじみ出ています。

 「米というものは生き物で産地によっても一軒一軒の農家、田んぼによっても毎年出来が違います。それは気温の具合・日照りの具合・それが何月かによっても変わります。私たちは産地ごとのさらに細かく農家ごとのその年の出来をチェックしています。農家ごとの過去の記録も長年持っています。もちろん自分のところだけではできません。何人かの米屋が手分けして情報を集めているのです。そうして今年はどの産地のどの農家の米を中心にブレンドするかを決めているのです」ということです。

 ブレンド米は日本語では混米と訳され、「純粋好き、生一本」の日本では「混ぜ物をする」悪いイメージがこびりつき、街の米屋の機能が奪われてしまう馬鹿なことが起こりました。ブレンドとは調合のことだと思います。薬でも調合するのは当たり前、珈琲でも酸っぱい豆ばかり、苦い豆ばかりでは味が単調で、これらを組み合わせてこそおいしい味になるのです。こんな当たり前のことを見失った日本の米文化の退廃が毎日食べるお米という日本文化の中心で起こり、米屋さんの機能が忘れられ、それをよいことに米自由化がすすめられ街の米屋が崩壊させられたのです。

 米についても調合の大事さは変わりありません。甘みのある品種、粘りのある品種、水気の多い品種、味の濃い品種などいろいろあって当たり前で、それをどう調合するかが米屋さんの役割なのです。そのことを消費者に分かってもらう努力を続け、モノでの非価格競争力の土俵をつくることに成功しているのがS米穀店の姿だったのです。

 
次回・・・②なりわいの商いの役割を生かす
20 . August
地方自治体による「宝物」探しの支援

 そのように考えていくと、地域の全体を把握するとともに、行財政権限をもって、独自の施策を系統的に展開できる地方自治体の役割は、極めて大きいと言えます。それは、地域の「宝物」探しにおいても、当てはまります。

 長野県栄村をはじめとする過疎地の小規模自治体では、1980年代から地域づくりに熱心にとりくんでいますが、そこでは地方自治体や地区公民館などがリーダーシップを発揮した「宝物」探しが、おこなわれてきています。

 大分県の平松守彦知事が提唱した「一村一品運動」も有名です。文字通り、自治体ごとに一つの特産品をつくり、それを東京市場だけでなく海外にも販売することをめざし、県も積極的に支援しました。その成功例として、1社だけで300億円を超える販売額を記録した焼酎メーカーがあります。しかし、その原料の調達先を調べると、ほとんどすべてが海外からの輸入品でした。これで、果たして地域が「活性化」したと言えるのでしょうか。地域の農家から調達しておれば、その焼酎の波及効果は地域の中に大いに広がっていたことでしょう。けれども、そうならなかったわけです。

 運動が開始されて20年以上経過し、地域づくりが今も継続して展開しているのは、「一村一品運動」を始める際にモデルとなった大山町(現在、日田市)と由布院(現在、由布市)など、ごく少数の地域です。それらの地域に共通しているのは、地域内の多くの経営体がネットワークを組みながら多品種少量生産をおこない、決して少数の企業体の「一品」のみに依存していないことです。

 これによって、お金が地域内に循環し、一社のみではなく、多数の経営体や住民に経済的利益が行き渡り、地域内再投資力が大きくなる仕組みがつくられています。

 一方、自治体が地域の担い手づくりをおこないながら、「宝物」の発見を支援しているところもあります。

次回…波田町の産業育成塾
25 . August
モノの非価格競争力その6 他にないモノを売る米屋

②なりわいの商いを生かす

 実際に食べてみた「米屋S」のストアブランド米はなんともいえない、これまで口にしたことのない味でした。米粒の濃さは「これぞ大地の恵み」という感じがしました。これを食してから、あらためて何種類かの有名産地銘柄米と食べ比べましたが格段の違いでした。今その感触を立証すべく多くの人に試してもらっていますが、答えは多分そのように出ると思います。こんなS米穀店でも規制緩和以降、売り上げは落ちているそうですが、幸い商売を続けられないほどではなく米一本で営業を続けています。私もこれだけの味があればディープなファンに支えられ十分やっていけると思います。

 お話を聞いたあと店舗の裏にある精米施設を見せてもらい、またびっくりしました。店頭でのブランド米にはこれだけの施設がいるのかと知ったからです。精米機はもちろん、石ころ、ガラス片、不良米、その他異物を探し出し取り除く機械がそれぞれあり、それに水分を調整する機械など、10台近くの機械設備が並んでいたのです。PL法(製造物責任法)ができてこれだけの設備が必要になったのです。いま米屋が困難な時勢にこれだけの設備投資は設備する場所も含めて大変なことでしょう。S米穀店では米屋の社会的役割に確信を持っていたから先見の明で数千万円の設備投資ができたのでした。

 こうして見学をするなかで、なりわい経営の本質を逆に学ばせてもらいました。それは扱う商品をよく研究し、ほんもの・こだわりの味を商売人自身が究め、それを消費者に伝えながら、社会の食文化を守る先頭に立ち、また商売人が消費者に守ってもらえるようなまっとうな商売のなかに、価格競争の波に巻き込まれないなりわいのいき方があるということです。

 
次回・・・③専門店から専門家店へ
25 . August
波田町の産業育成塾

 筆者は、昨年秋から、上高地の麓にある長野県波田町に、月1回、通っています。この町が呼びかけてつくった産業育成塾の塾長としての仕事を果たすためです。塾生は、30~40歳代の農家や商工業者の人たちです。
 
波田町は、梓川の河岸段丘で有名な町であり、段丘面ではコメや果樹、花に加えて、特産品のスイカが栽培されています。塾生の半分くらいは、これらのスイカ、果樹、花農家です。また、商工業者の塾生は、建設業、自動車整備業、金物屋、旅行業、酒販店、造園業等、多種多様な仕事に従事しています。

 最初は、互いにそれほど面識がなかった塾生たちでしたが、地域の歴史や先進事例を学び、アフター・ゼミの懇親会も含めて会を重ねて議論するごとに、地域づくりのネットワークの芽が育ち始めてきています。

2月の例会で、自分の経営と地域づくりの夢を一人ひとりに語ってもらいました。その際に、とても印象的な話を聞くことができました。わずか3年ほど前にIターンでスイカ農家となったD氏の話です。彼は、東京でさまざまな仕事を経たうえで、ある縁
から波田町でスイカを作るようになりました。そして、今、年の半分をスイカ作りに専念し、あと半分は勉強のために全国の優れものの農家を訪ねてまわっていると言います。

 「ぼくは、お金もうけをしたくてスイカを作っているわけではない。作る過程、作ったものをお客さんに食べてもらう過程でできる、人と人との関係がたまらなくいい。農業は、他の産業とは全く異なる、いのちをつくり、はぐくむ活動であり、生きがいである」というのが彼の言です。

 おそらく、代々続いてきた農家の後継者だけでなく、商工業関係者も自分の仕事を見つめ直すきっかけになったのではないかと思います。そのあと、町のなかにある地域づくりの「宝物」を探し、自分や仲間の経営とそれらをいかに結びつけるかという趣旨の発言が次々と続き、議論が盛り上がりました。地域の「宝物」をつなぎ、情報発信し、旅行者に来てもらおうと、新たな事業を立ち上げることを決意した塾生も生まれています。

 大規模な都市自治体では、墨田区のように全事業所調査を定期的に実施し、そこでの経営状況だけでなく経営課題や行政への要望も聞き、それを中小企業施策として実現したり、あるいは異業種交流系統的に支援する自治体も存在します。

 墨田区では、そのような統計的な支援策をすすめるための中小企業振興基本条例も、早くから定められています。このような条例制定の意義については、別の機会に述べたいと思いますが、墨田区のような形で地域内の全事業所の経営内容を把握することができていない自治体が圧倒的に多いのが現状です。しかも、市町村合併によって広域化した自治体においては、地域の経済状況や個別経営の状況まで把握することができなくなっています。

 生活領域に近いところで地域づくりの主体がネットワークを作っていくためには、都市内分権をすすめ政令市の区単位や合併前の町村単位で地域自治組織をつくり、地域づくりがおこなえる仕組みを求めていくことが重要な課題になります。

 いずれにせよ、地方自治体の主権者は、私たち住民であるわけですから、地方自治体のあり方に対しても積極的な発言をしていくことが必要です。

次回…地域内再投資力の発見
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